銀が45年ぶりの高値に──なぜ今、価格が動いているのか
2025.10.20
2025年秋、銀の価格が世界的に大きく上昇しています。
ニューヨーク・マーカンタイル取引所(COMEX)では銀先物価格が1980年以来の高値を記録しました。
日本国内でも、田中貴金属工業の店頭価格が1グラムあたり287円を超え、約45年ぶりの水準となっています。
この動きは一時的な高騰ではなく、いくつかの要因が複合的に影響していると考えられています。
銀とはどのような金属か

銀(シルバー)は、古代から装飾品や通貨として利用されてきた貴金属です。
金に比べて柔らかく、加工がしやすい特徴を持ちます。
近年ではジュエリーよりも「工業素材」としての役割が強まり、電子部品、太陽光パネル、医療機器などに欠かせない存在となっています。
つまり銀は、投資対象であると同時に製造業を支える重要な原料でもあります。
そのため、価格は金融市場の動きと実際の生産活動の両方に左右されます。
45年ぶりの高値に至った背景

1. 工業需要の拡大
最大の要因は、太陽光パネルと電子機器の生産拡大です。
銀は電気を非常によく通すため、太陽光発電セルの配線材や半導体部品に広く使われています。
再生可能エネルギーへの転換が進む中国やインドなどでは、太陽光パネルの需要が急増しており、銀の消費も増えています。
世界銀協会(The Silver Institute)の報告によると、2024年の工業用途の銀需要は前年から約9%増加しました。
供給が追いつかず、世界的に在庫が減少している状況です。
2. 投資需要の高まり
もう一つの要因は、安全資産としての需要です。
国際情勢の不安定化や主要国の金利政策の変化などを背景に、投資家がリスクを避ける動きを強めています。
金の価格上昇が続く中で、相対的に割安感のある銀にも資金が流入しました。
特にETF(上場投資信託)を通じて取引する個人投資家が増えています。
3. 供給制約
銀は多くの場合、鉛や亜鉛、銅の副産物として採掘されます。
そのため、銀だけを目的に生産量を大幅に増やすことが難しい構造になっています。
近年は南米の鉱山でコスト上昇や労働問題が起きており、供給量が思うように増えていません。
こうした制約が、需給の逼迫をさらに強めています。
1980年との違い──今回は投機ではない
1980年にも銀価格が急騰しましたが、その際はアメリカのハント兄弟による買い占めが原因でした。
当時の上昇は明らかな投機的バブルであり、短期間で崩壊しています。
一方、現在の高値は実需と投資需要が同時に高まっている結果であり、特定の投資家による操作ではありません。
専門家の多くは、今回の上昇を「構造的な需給変化によるもの」と分析しています。
もちろん価格の変動は今後も起こりえますが、急激な下落を招く要因は現時点では限定的とみられています。
銀投資を考えるときの基本

現物と金融商品の違い
銀を保有する方法は大きく分けて二つあります。
1、現物購入:コインやバー(延べ棒)を実際に保有する方法です。手に取れる安心感がありますが、保管場所や売却手続きに手間がかかります。
2、金融商品:銀ETFや銀先物などを通じて取引する方法です。少額から始められ、流動性も高いですが、価格変動による損失リスクがあります。
投資にあまりなれていない人は、まず国内の地金店(田中貴金属工業や三菱マテリアルなど)が公表している店頭価格チャートを定期的に確認するのが安全です。
市場全体の流れをつかむことができます。
長期的な視点を持つ
銀の価格は短期間で大きく動くことがありますが、長期的に見ればインフレ対策や工業需要の増加とともに安定した価値を持ち続けています。
株式や金など、他の資産と組み合わせた分散投資の一部として取り入れると、リスクを抑えながらメリットを得やすくなります。
専門家の中には「金は守りの資産、銀は成長の資産」と位置づける見方もあります。
今後の見通し
今回の銀価格上昇は、世界経済の構造的変化を反映しているといえます。
脱炭素化、電子機器の普及、そしてインフレ環境。
これらの流れはいずれも短期では終わらない要素です。
短期的な値動きに振り回されるよりも、銀が現代社会の中でどのように使われ、どんな価値を持っているかを理解することが大切です。
45年ぶりの高値というニュースは、単なる記録更新ではなく、社会や産業の転換点を映すものと考えられます。
まとめ
1、銀価格は2025年、1980年以来の高水準を記録
2、太陽光パネルなどの工業需要と安全資産としての人気が背景
3、投機ではなく構造的な需給変化による上昇
4、投資にあまりなれていない人は、まず価格推移を確認しながら長期視点で考えるのが現実的


